2019-03-20 20190319#2 雑居ビルのガラス戸を開けると、彼はブラジルの地に立っていた。 南の国の空気が彼の肺に溶け込んでいった。 そこは、リオデジャネイロもサンパウロも、トーキョーもモスクワもないような、特別なブラジルだった。 デジタルサンバに身体は揺れ、酒と唐辛子の刺激が命を燃やす。 彼はすっかり良い気分で、「ボア、ノイチ」と微笑みながら、まだ寒さの残る故郷へと帰っていった。