20190323#1
彼はその日、ハンナリ族の支配地域に居た。
エスカレーターで立つ側は、彼の民族とハンナリ族とで共通していて、彼は本能的にハンナリ族が同じ文化圏に属しているのだと悟った。
彼の中で、ハンナリ族との友好を実現する可能性が開いた。
しかしその後入った民族食堂は、値段だけは民族の誇りを感じさせるものだったが、接客という点ではお粗末なものだった。
「二度とこの地を踏むまい」
彼は静かに呟いた。
そしてその後実際に、生涯を通じて彼がハンナリ族の支配地域に足を踏み入れることはなかった。