20190226#3
彼は一仕事を終え、休む間もなく次の仕事のために道路を歩いていた。
突如、目の前に光が差して、声が聞こえた。
「決断をなさいなさい、泥をかぶってもチャンスを掴むのか、汚れるのを厭い、今のままでいるのか」
彼はしばらく迷った末、泥をかぶることに決めた。
すると彼の心と腹は瞬時に満たされた。
求める者は与えられるのだということを、その時、彼は、しっかりと理解した。
20190226#2
この頃、彼が出会う人はことごとく初心者であった。
朝、ダイナーでハンバーガーを注文しても、料理が出てくるまでには時間があった。
昼、レストランで決済をする際、ウェイトレスが機械の操作に戸惑っていた。
夜、バーに入り酒を注文すると、若い男は奥へ引っ込み、しばらく待った末、結局その酒は置いていなかった。
彼はその度に、そういった状況にどう反応すべきか慎重に検討し、全ての状況に対して寛大でいることを決めた。
なぜなら彼自身も、まだまだ人生の初心者であるからだ。
ここで不機嫌になれば、その同じだけの不機嫌が、自分にも降り掛かってくるような気がした。
20190226#1
彼はこの日の朝、美容室の椅子に座って、散髪を終えたばかりの自身の姿を見た。
鏡の中の彼は、普段と少し雰囲気が違って見えた。
それはまるで、大いなる成功を築き上げた男の顔つきをしていた。
それを眺めながら彼は、再び、あの例の確信を抱いた。
鏡の中の彼の口角が、静かに持ち上がった。