20190303#4
「おい、戻ってくるんだ」
故郷の山にある祠を目指して門をくぐると、人の声がした。
彼はしばしの間立ち止まったが、しかし、そこに何があるのか、彼自身の目で確かめずにはいられなかった。
彼は歩き続けた。
途中、道が分かれていて、どちらへ行けばよいのか迷ったが、進んでみると、結局どちらの道も同じ場所へと繋がっていた。
しかし、その過程で経験することは異なっていた。
祠に辿り着くと、彼は深い瞑想状態に入り、その内側に、大蛇を吸い込んだ。
帰り道、彼は蛇の如く道を進んだ。
一瞬、悪寒が彼の全身を支配したが、それは彼の武者震いであった。
20190303#3
彼は針の苦しみを耐え、その背中に証を得た。
その後彼が家を出ると、伝道者が二人、彼のもとに遣わされた。
伝道者は彼の証を見て、その信仰の深さに感心し、「あなたの世界に光のあらんことを」と言い、去っていった。
そうして彼は理解した。
彼の精神はまた一つ、違う段階へと切り替わったのだということを。
20190303#2
目指していた街へ着くと、彼はまず最初に神殿へと歩を進めた。
こころがざわついた時、その神殿はいつも彼のこころを整えてくれた。
彼が可能な限りの所持金をそこで清め、目を閉じ、感謝の念で心を満たしたその時、彼の目の前で短く鐘の音が鳴った。
彼は驚き目を開けたが、そこには何もなかった。
その後、彼は下僕の証を、こころとからだの両方に、しっかりと刻み込むこととなる。
20190303#1
彼は前日の仕事の出来の悪さや、それがきっかけとなって彼の内的世界に生じていた、彼の周囲に働いているあらゆる歯車の噛み合わせの悪さに、久方ぶりに居心地の悪い思いをしていた。
その日もまた、一日の始まりから、およそ全ての出来事がズレていた。
何回目かのズレのあと、彼の自尊心はもはやあの忌まわしき悲観主義者のそれと変わらないものとなってしまったが、しかし、彼は思い直した。
「失敗しても、別に良いのだ。それも立派な経験なのだ」
彼は電車を降り、別方向行きの電車へと乗り換えた。
20190301#2
彼は一人、深夜の湖畔で煙を吹かしながら、自分に言い聞かせた。
「良いも悪いも本当は無いもの。無いものに判断を与えるのは内なる声。それは聖霊のささやき」
そうして彼は短い瞑想に入った。
彼の主観の世界には、静寂以外の性質は存在しなかった。
その時から、彼は世界を歩み始めた。
まだ見ぬものを見る旅へと。
20190301#1
「求めれば、与えられる。しかし何故、与えられないのだろう」その時彼は考えていた。
そしてすぐに、一つの簡単な答えに達した。
彼は実は、求めてはいなかったのである。
その理由もまた、恐れであった。
恥をかくかもしれないという、架空の恐れである。
彼の心の奥深くに、恥を恐れる気持ちが染み付いていた。
しかし彼はもうそのことを理解している。
あとは、解決策が与えられるのを待つばかりである。
彼は今、解決策を求めているのだから。
20190228#1
昨日、彼は機会を逃してしまった。
彼らしくもない、それが機会だと理解した上で、怖気づいてしまったのである。
彼は恥じた、そして、誓った。
「もう機会は逃さぬ、見つけたら、這ってでも掴んでやる」
すると彼の願いは届けられ、昨日の代替的な機会が、彼に与えられた。
彼は恐れを捨て、ただ前を見据え、機会をしっかりとその手に掴んだ。